LDX2101 溶接について

(Outokumpu社 LDX2101についての溶接性確認試験)

1.溶接
溶接は、SUS材で一般的に使用されるTIG溶接を行い、その施工性、溶接条件の確認を行いました。
シールドガスについては、Outokumpu社の推奨する、アルゴンー3%窒素混合ガスと、純アルゴンの2ケースで施工法試験を行い、どの程度の性能差が出るかを確認しました。
板厚、使用材料:LDX2101 4mm
溶接開先
溶接開先75度 溶接開先75度
開先角度については、テスト条件出しの過程で、溶融プール近傍の溶け込みがSUS304に比較して、若干悪いと思われたので、開先角度は一般開先条件より広い75°としました。

板厚、使用材料:LDX2101 3mm
溶接開先
溶接開先90度 溶接開先90度
溶接
溶接時の特徴としては、純アルゴンガスを使用した場合、通常のSUS304材の溶接に比べ、溶融プールの未溶接部への溶け込みが悪い傾向があります。これに起因して、裏波溶接には、充分に注意する必要があると思われます。
アルゴンー3%窒素混合ガスの場合は、上記の傾向は軽減され、ビード形成はしやすくなりました。
(写真をクリックすると拡大表示します。)
使用したガス混合器 溶接状況
使用したガス混合器
溶接状況
TP(表面) TP(裏面)
TP(表面)
TP(裏面)
溶接条件
  4tテストピース 3tテストピース
パス 1 2 1 2
溶接方法 T T T T
溶接材料 LDX2101 LDX2101 No LDX2101
径 (mmφ) 2.4 2.4 - 2.4
電流極性 DCSP DCSP DCSP DCSP
電流(A) 90 110 70 90
電圧(V) 11 12 10 11
溶接速度(cm/min) 7 11.5 10 11
シールドガス流量(l/min) 12.5 12.5 12.5 12.5
バックシールドガス流量(l/min) 10 10 10 10
パス間温度(℃) 18 18 18 18


2.機械試験及び硬度試験
機械試験は継手引張り試験、表曲げ試験、裏曲げ試験及び硬度測定を行いました。
試験実施場所 :住友金属テクノロジー株式会社
機械試験結果
TP 種別 引張強さ(N/mm2) 破断位置 曲げ試験
溶着金属部 表曲げ 裏曲げ
4t Ar+3%N2-1(※1) 730 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
4t Ar+3%N2-2(※1) 735 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
4t Ar-1 717 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
4t Ar-2 710 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
3t Ar+3%N2-1(※1) 751 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
3t Ar+3%N2-2(※1) 729 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
3t Ar-1 725 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
3t Ar-2 724 溶着金属部 割れ無し 割れ無し
LDX2101
HOT ROLL PLATE (Min.)
650 - - -
LDX2101溶接棒
Typical Value
730 - - -
※1:「N2」は「Nの2乗」を表す。

引張り試験結果より、Ar+3%N2(※1)ガスを使用した方が、若干引張り強さは強く、ほぼ、溶接棒カタログ値通りの結果を得られましたが、Ar100%の場合は3%程度引張り強さが低下する傾向が見られます。

しかしながら、母材メーカー最低値よりは高い値を得られていますので、Ar100%ガスによる溶接も可能と判断できます。
4tの溶接棒使用の場合の強度と、3tの溶接棒片側不使用の場合の引張強度は、若干溶接棒無しの場合の方が高いようですが、実用上の差異はほとんどないものと考えられます。
※1:「N2」は「Nの2乗」を表す。
硬度計測結果(MHV 500g)
TP 種別 計測位置 母材 熱影響部 溶着金属 熱影響部 母材
1 2 3 1 2 1 2 3 1 2 1 2 3
4t Ar + 3%N2(※1) 外面側 239 232 232 224 235 229 236 234 220 229 233 236 239
中央部 239 231 232 229 232 238 228 239 218 234 246 234 251
裏面側 240 237 228 234 221 226 234 237 229 247 234 242 242
4t Ar 外面側 252 248 258 235 251 238 249 232 234 234 234 247 250
中央部 250 244 247 246 237 250 252 234 216 221 223 232 236
裏面側 247 248 266 244 241 245 231 243 235 229 250 254 258
※1:「N2」は「Nの2乗」を表す。


3.成分分析
学成分分析は、溶着金属部について、下記の7成分について行いました。

TP 種別 C Si Mn Ni Cr Mo N
4t Ar+3%N2(※1) 0.023 0.54 2.40 5.58 22.84 0.28 0.171
4t Ar 0.022 0.62 1.19 5.50 22.61 0.28 0.123
Outokumpu LDX2101
カタログ成分
0.03 - - 1.50 21.50 0.30 0.22
Avesta社溶接棒
カタログ成分
0.022 0.40 0.50 7.0 23.00 <0.5 0.14
※1:「N2」は「Nの2乗」を表す。

アルゴン窒素混合ガス使用の場合と、純アルゴンガス使用の場合では、溶着金属中の窒素量に明確な違いが見られますので、化学分析と可能であれば、上記の溶融プールの流動性も考慮し、アルゴン窒素混合ガスを使用する方が望ましいと言えます。


4.総括
Outokumpu社リーンデュプレックスステンレスLDX2101材の溶接について、基礎的なテストを行った結果、溶接性そのものはそれほど困難なものではなく、合金成分特有の性質を理解すれば、充分に健全な溶接は可能な材料と思われます。
注意点としては、溶融金属の流動性が、ハイクローム・ニッケル系ステンレスと同様に一般のオーステナイトステンレス系材料に比べ悪い為、開先角度やルート間隔の設定に注意を払う必要が有りますが、それほど特殊な溶接では無いと思えます。
まさしく、”Not difficult but different”そのものと言えます。


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